高等学校での金銭教育がいよいよ始まりますね!
2022年度から実施される高等学校学習指導要領では、
家計管理については、収支バランスの重要性とともに、リスク管理も踏まえた家計管理の基本について理解できるようにする。その際、生涯を見通した経済計画を立てるには、教育資金、住宅取得、老後の備えの他にも、事故や病気、失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット・デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする。
参照:文部科学省「高等学校学習指導要領」
とあります。
Contents
金銭教育実施の背景とキッカケ
1996年から2001年にかけて「日本版金融ビッグバン」と呼ばれる金融環境の劇的とも言える変化で、投資信託の銀行窓口での販売開始、確定拠出年金の導入、ペイオフ解禁と、とくにこの10年ほどの動きはめまぐるしいものがありました。
銀行、保険、証券などの業態の垣根も見えにくくなり、金融商品の広告はあふれ、消費者の選択の幅が広がる一方で、確かな情報を得て、妥当なリスク判断を迫られているといえましょう。
金融商品の販売者側に対して消費者への重要事項の説明義務や、不十分な説明によって消費者が損害を被った場合の消費者の損害賠償請求の権利を認める法制度(金融商品販売法)を生み出すと同時に、消費者の金融に関する基礎知識の普及や学習機会の保障を必要とすることになりました。
また2018年に民法の一部改正で、選挙権年齢及び成年年齢が18歳に引き下げられることになりました。
生徒にとって政治や社会が一層身近なものとなるなか、高等学校においては、生徒一人一人に社会で求められる資質・能力を育み、生涯にわたって探究を深める未来の創り手として送り出していくことが、これまで以上に重要となっているとも言えるのではないでしょうか。
参考資料:金融広報中央委員会 知るぽるとより抜粋
海外における金融教育
では、海外の金銭教育(金融)はどのように行われているのでしょうか?
金融教育が進んでいるとされる、イギリスを例に見てみましょう。
イングランドでは、初等・中等教育では2014年から新しいカリキュラムが開始されていますが、現行のものにも金融教育の内容が存在し、銀行やチャリティ団体が学校に出向いたりして金融教育を実施している。
参考資料:イギリスにおける金融教育 北海道教育大学釧路校家庭科教育研究室 鎌田浩子
また、小学校入学前の3歳児から11歳を対象としたものであり、3~5歳段階・5~7歳段階・7~9歳段階・9~11歳段階の4つの段階別に作成されたカリキュラムが作成されている。
3~5歳段階では、1から10までの数を学ぶ、コインやポンドなどお金の単位や価格、支払い、おつり、購入、財布、銀行といった内容を学ぶ。
5~7歳段階では、現金自動預け払い機、郵便局、選択、お小遣いなどお金を使い場面やニーズ、ウォンツ、心情に関する事を学ぶ。
7~9歳段階では、予算、領収書、小計、現在までの残高など、おこづかい帳のような金銭の出入りを記録する為の語録に加え、賃金、給与など収入を得る事に加え、地域、チャリティなど収入を得ることだけでない価値観に関する事も学ぶ。
9~11歳段階では、クレジットカード、デビットカードなど、更に経費、不可欠、控除、損失、リスク、リターン、貧困、ギャンブルなどの事も学ぶ。
日本では、中等、高等教育の専門科目の商業授業でしか学ばないものまでカリキュラムであるところも目が点になる。
次に、オーストラリアも見てみましょう。
メルボルン宣言の教育理念から、『経済とビジネス』は、『個人・家族・共同体・ビジネス・政府が資源分配に関して意思決定する方法を探求する事、子供たちの経済・ビジネスの意志決定プロセスやそのことの自身や他人及び現在や将来への影響を理解する事』等を目標にし、小学5年生から高校1年生までの子供たちを育成する目標で、金融経済教育が行われている。
参考資料:「海外における金融経済教育の調査・研究」報告書
この2か国を見て感じた事は、国家戦略であることは勿論であるが、教育の一貫性、そして幼少期からプログラム化された継続教育が行われている共通点があります。
そもそも日本で、お金の教育と聞くと、『投資教育』とイメージする方が多いのではないでしょうか。
また、お金のことを学ぶというとすぐ『投資』に結びつけてしまうところがあると思います。
確かに投資教育の側面はございますが、お金の教育の本質は自分の人生設計における仕事、金銭管理について、確かな意思決定をするための知識を個々人が身につけることなのではないでしょうか。
「経済」を動かすもの
例えば、経済の仕組みはどのように構成されているのでしょうか。
経済の仕組みは複雑に見えますが、そのからくりはどのように構成されているのかを考えると、経済の核は人間の知恵である「取引」であると言えます。
また、経済を動かす要素の一つとされているのも、「取引」です。
経済は「取引」の積み重ねであり、何かを買うと「取引」が発生します。
買い手がお金やクレジットを提供し、それと引き換えに売り手は、物・サービス・資材などを提供します。
そして、使われたお金とクレジットの合計で支払総額がわかります。
この支払総額が経済を動かします。
支払額を売上量で割ると、単価が分かります。
これが「取引」です。
経済市場は、買い手と売り手が「取引」をする事で構成されます。
経済は全ての取引と全ての市場の積み重ねなのです。
人、会社、銀行、政府機関、この全てが「取引」をしています。
このような知識も身につけていかなければないだろうか。
またお金儲けしたいと、お金を追いかけるだけでは、お金は決して寄ってきません。
ではどうすればいいのか。
誰かの問題を解決してあげることが、お金につながるのではないでしょうか。
お金と言うと、『汚いもの』『お金がなくても幸せ』などと言う人もいますが、自分がやりたいことをやるには、当然、お金は必要です。
だからこそ、お金について学び、お金の価値を知り、よい循環を生むことも大切なことではないでしょうか。
長期保有がキモ
では少し、投資の側面的な事に触れます。
2000万円問題や、人生100年時代と言われている昨今、自助努力で資産形成が必要である時代に突入しております。
政府が推奨しているiDeCo・DC、NISAなどございますが、iDeCoの加入者数は2020年11月時点では約178万人との事です。
参考:国民年金基金連合会より
またアクサ生命保険株式会社の資料『資産形成まるわかりガイド』によれば、MIT(マサチューセッツ・インベスターズ・トラスト)1924年7月に米国で設定され、現在でも運用されている米国最古の投資信託では、2018年12月末の資産残高、約35,920,868ドル、一年後の2019年12月末の資産残高、約47,380,000ドル、つまりこの一年で約11,459,132ドル成果があったとあります。
ここで気付いて頂きたい大切な事の一つは、長期で保有し続ける事であります。
しかしながら、日本の投資信託で推計平均保有期間は、2018年、2019年ともに約3.3年とございます。
金融教育の土台
こういった側面からも、投資の文化の前に、金銭教育(金融)の土台が必要であるではないでしょうか。
金銭教育(金融)は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養うのが教育であると考えます。
資産形成も時間をかける事がポイントでありますが、日本における金銭教育(金融)もまた時間をかけて金融リテラシー向上を続けることが重要であると感じております。
2022年からいよいよスタートをする金銭教育(金融)ですが、諸外国と約10年もの間、スタートが遅れている訳ですので、2022年からの金銭教育(金融)に大きな期待と共に、教育のスピードや質も更に上がっていければ良いと心から願っています。
例えるなら、ウサギと亀のお話において、怠けないウサギのようになる事も必要なのではないでしょうか。
またコインは、表面と裏面だけではなく、側面もあるように、正しい知識を身につけ、また柔軟に応用が出来るような継続教育の土台が構築出来れば嬉しく思っております。
今を変えれば過去も未来も変えられる!