キャリア女子の不妊治療についての気になるハナシ

こんにちは!看護師、助産師のsaoriです。
不妊治療現場で、現役で働く私から、『不妊治療ってお金がかかる、大変』と聞くけどどんなことをしているの?という疑問に、少し専門的なことも含めてお話しさせていただきますね!

今すぐ関係のないお話かもしれませんが、お客様の中には、実は不妊治療を経験されてる方はたくさんいらっしゃると思うので、是非知識として、そして将来のために知っていて頂けたら嬉しいです!

不妊とは?

「妊娠を希望して1年以上、お子様に恵まれないカップルのこと」を不妊と言います。

現在の日本では、35.0%のカップルが「自分たちは不妊ではないか?」と心配したことがあると言われています。
実際になんらかの不妊治療を受けたことがあるカップルの割合は、約5.5組に一組、18.2%にものぼります。
また、不妊の原因は女性側にあると考えるカップルが多いのですが、不妊の原因は男性女性半分ずつと言われています。

不妊の原因

女性側の原因としては、

  1. 排卵因子
  2. 卵管因子
  3. 頸管因子
  4. 子宮因子
  5. 免疫因子

男性側の原因としては、

  1. 造精機能障害
  2. 精路通過障害

に分類できます。(日本産科婦人科ホームページより)

女性側因子

では、ここからは具体的にそれぞれがどのような原因を指すのか、お伝えしていきます!

1.排卵因子

月経は約1ヶ月の周期でおこりますが、極度の月経不順の場合は排卵が上手に起きていないこともあります。
例えば、『多嚢胞性卵巣』などによるもともとの素質によるものや、甲状腺ホルモン、肥満、短期間に大きな体重変動がある場合に、ホルモンバランスが乱れ、排卵がうまくいかない場合があります。
排卵のタイミングが読めなかったり、そもそも排卵がうまくっていなかったりすると、当然、精子と卵子は出会うことができず妊娠の障壁となります。

2.卵管因子

精子と卵子の出会いの場である卵管。
この通り道が、何らかの原因によって通ることができなくなってしまうことがあります。
強い月経痛を引き起こす子宮内膜症や、性感染症であるクラミジアの感染で、骨盤内や卵管に炎症が起こり、癒着してしまうことで、卵管が閉鎖または、狭窄してしまい、妊娠の障壁になります。
クラミジアは特に女性は無症状であることが多く、知らない間に感染している方も多い性感染症です。

3.頸管因子

膣と子宮体部を繋いでいる部分を子宮頸管とよびます。
頸管は、月経周期によって帯下(おりもの)の性状を変化させます。
通常、排卵前になると進展性の高い粘液が頸管内を満たし、排卵後になると蓋をするように粘度の低い帯下に変化します。しかし、頸管粘液が排卵の時期に少なかったり、精子の通過に適していなかったりといった状態になると、精子の通過を妨げてしまうのです。

4.子宮因子

子宮の形が先天的に、あるいはポリープや子宮筋腫、子宮腺筋症などで、内膜を圧排していたり、内膜の血流が悪かったり内膜が癒着していると、着床することができず妊娠の障壁となります。

5.免疫因子

人間には、自分の体を守るために『免疫』という力が働いています。
今、コロナのワクチンも、その『免疫』を作るために盛んに打たれていますよね。
その免疫によって作られる『抗体』が、時に精子を攻撃してしまうことがあります。これは、『抗精子抗体』と呼ばれます。この『抗精子抗体』が、頸管粘液や卵管粘液の中に分泌されると、精子の運動性が失われ、精子と卵子は出会うことができなくなってしまうのです。

男性側因子

では、男性側の因子をみていきますね。

1.造精機能障害

精液中に精子が少ない、いない、あるいは動いていないなど、性状が悪いと妊娠への障壁となります。
原因としては、『精索静脈瘤』などによって、睾丸の温度が高くなることで起こる場合もありますが、原因不明の場合もあります。

2.精路通過障害

いわゆる性機能障害とよばれる、勃起が難しい『勃起障害』=EDや、射精ができない『射精障害』、膣の中でだけ射精できない『膣内射精障害』などが、性交渉自体を阻害する因子になります。

このように女性側男性側それぞれに原因はあります。
そして、不妊症のなかの10%〜25%にのぼると言われているのが、上記検査をしても何も見つからないが、妊娠しない状況を『原因不明不妊』と呼びます。

他にも、受精が難しい『受精障害』、着床しない『着床障害』、不妊とは少し異なりますが妊娠はするのだけど出産に至らない『習慣性流産』や『不育症』などの概念があります。

ざっと挙げただけで、これだけの要因があり、逆にいうと子供を授かるために、これだけのハードルがあり、私たちはそれを乗り越えて生まれてきました。

私たちの命、どれだけ尊いか…改めて感慨深いですよね。

不妊治療の進み方

さて、不妊治療の話に戻ります。
不妊の原因は色々ありますが、先ほどもありましたように『原因不明』の不妊も多く存在するのが実情です。
何も異常が見つからないのに妊娠しないのです。
正しく言えば、調べられる範囲の異常がないということです。

不妊治療には、

  1. 検査
  2. タイミング法
  3. 人工授精
  4. 体外受精

という段階があり、女性側の年齢や見つかった原因により、どこからスタートするのか、一つの段階にどれくらい時間をかけていくのかが変わってきます。

卵子と精子の作られる時期の違い

ここで一つ抑えていただきたいポイントがあります。 
『女性側の年齢』が考えるべき重要なポイントなのです。
女性の体は、胎児の時期に生涯で最も多い約700万個という卵子を保有しています。
その約700万個の卵子は、生まれる時には約200万個まで減少し、10歳の頃には約30万個、20歳には約10万個。
そして閉経はこれが1000個以下になった時と言われています。
そして、この減少スピードはまさに個体差です。早発閉経と呼ばれる方はこのスピードが速く、30代で閉経を迎えてしまうのです。
胎児の時からずっと身体の中に眠る卵子。
年齢を重ねれば重ねるほど、その卵子は古くなります。
そのため、女性の卵子は年齢を重ねるほど染色体異常の可能性が増えるのです。
年齢を重ねると、染色体異常の卵子が増える一方、卵子の母数は減ります。
結果、正常な卵子に出会える可能性が低くなり妊娠に結びつきにくくなるのです。

一方男性の精子は、胎児期には存在せず、思春期を迎えた頃から産生が始まります。
精子は常に作り続けられているため、細胞は常に新しく生まれ変わります。
もちろん、35歳を超えると少々その産生数等が低下するとも言われていますが、女性に比べればその変化は大きいとは言えません。

一方で、男性の精子の約90%は、奇形精子で正常の形態ではありません。
数千万から億単位で一回当たり射精される精子ですが、その中の正常形態=染色体異常のない精子は数%なのです。

一般不妊治療

1.一般不妊検査

精液検査で精子のチェックをしたり、女性のホルモンバランス、卵管の通過性をみたりしていきます。
また超音波検査で、子宮筋腫や卵巣嚢腫など器質的な異常がないかもチェックしていきます。
これは保険適応されています。器質的異常に対して手術をする場合は多くは入院が必要になります。

「検査で大きな問題が見つからなかったカップル」かつ「不妊期間が短く、比較的若いカップル」は、タイミング法からはじめます。

2.タイミング法

タイミング法は、 排卵日の3〜4日前に病院に受診して膣からの超音波検査を行い排卵日を予測します。 
タイミング法のポイントは、精子が卵子の排卵を待ち伏せできるタイミングでの性交渉を行うことです。
具体的には、精子は射精されてから女性の身体の中で72時間は生き続けられると言われていますが、卵子は12時間、どんなに長くても24時間と言われています。
つまり、卵管の待ち合わせ場所で精子が待ち伏せしていて、排卵した卵子はすぐに精子に出会えることが大切になります。
そのため、タイミング法は排卵日の2日前が最も妊娠率が高く、逆に排卵してしまうと妊娠はしないのです。

3.人工授精

タイミング法で上手くいかなかったり、そもそも『膣内射精障害』などで性交渉が難しかったりするカップルは、検査の後に人工授精に進みます。
人工授精は、精子を体外で射精させ、洗浄し、正常形態の精子を集めます。
正常形態精子を濃縮し、細いカテーテルを排卵の直前あたりに子宮の中まで送り込むのが人工授精です。
人工授精の場合は、子宮内宮にまで精子を送り込むので、排卵日直前に人工授精を行っても大丈夫なのです。
人工授精は、もともとタイミング法がうまくできているカップルにとっては、正直治療でお手伝いできることが多くありません。
もともとタイミングが取れるカップルにとっては、人工授精は数%の妊娠率上昇のみお手伝いしてくれます。

一般不妊検査、タイミング法、人工授精、ここまでの治療を『一般不妊治療』と呼びます。

高度生殖補助医療

4.体外受精

タイミングや人工授精でなかなか妊娠しないカップルや、そもそも精子に大きな問題があるカップル、あるいは女性側が高齢であるカップルには体外受精を早めにお勧めしております。
体外受精等のことを『高度生殖補助医療』と呼んでおります。 
精子は人工授精と同様に体外で処理します。
体外受精の最も大きなポイントは、排卵をさせずに身体の外で受精させることです。
これによって卵管での待ち合わせは不要になります。

実は、卵管は通過性を検査で評価することができても、その機能を評価することが難しい臓器です。
そのため問題ないとされていても、本当に精子と卵子が出会えているかはわからないのです。
体外受精では、精子も卵子も身体の外で出会わせるため、出会えないということがありません。
また受精から分割の過程までを可視化できるため、どこで上手くいっていなかったのか原因検索にもなります。

しかしながら、体外受精は膣から針を刺して卵子を採取する「採卵」という手術が必要となることもあり、女性側の体の負担と費用負担が大きくなります。

不妊治療の費用

一般不妊検査は、保険で賄えますし、一般不妊検査から人工授精までは一般不妊検査等助成金という助成金を申請すれば5万円の補助が出ます。
人工授精は1周期、病院にもよりますが、2〜3万円というところが多いように思います。
一方で体外受精は採卵までで15〜30万円、移植に10万円かかり、その他に受精卵の凍結代金や注射代金などもかかります。
採卵から一回の移植までに、60〜70万円かかるところが多いようです。

ただし、これはかなり病院や女性によって一回に採れる卵子の個数も異なるため、個人差、病院差が大きいです。
現在は、43歳未満には特定不妊治療等助成金が出ます。
採卵から移植までで最大30万、移植だけに最大15万円出ます。
一回の採卵、一回の移植で最短で妊娠できても、自己負担は30万円程度になります。

不妊治療は将来の自分に身近な問題かもしれない

不妊治療を5.5組に1組が受ける時代です。
半分助成金が出たとしても、30万円って結構な負担ですよね。
また、1回の採卵と移植で妊娠できるカップルは正直、それほど多くはありません。
また、43歳以上で不妊治療を希望される方は全て自費になります。
また、通院が多くなるため仕事を調整する、退職せざるを得ないなど、働き方を変える人も多くいます。
(そういった退職者を減らすために不妊治療をサポートする会社も増えています。)
そこをフォローする民間の保険商品も多く出ています。

「不妊治療って?」
「お金はどのくらいかかるの?」

若い皆さまはすぐには出会うことのないこの問題ですが、多くのカップルが不妊という問題に向き合っていること、苦労して悩んでいることを知っていただき、理解を示していただけたら幸いです。

saori 
看護師/助産師/保健師/精神保健福祉士/生殖医療相談士 
東京都八王子市出身
大阪大学医学部保健学科卒業後、助産師を取得。
産婦人科病棟、中絶を行うクリニックでの勤務を経て現在は不妊治療分野に従事する。
望まない妊娠や性感染症、40代になってからの妊娠希望など、知識があれば違う結果になったのでは?と考えさせられる患者さまにたくさん出会い、性教育の必要性を痛感。現在は不妊治療分野での勤務を継続しながら、SNSメインで性教育について発信中。