こんにちは。
助産師、看護師として産婦人科の現場で働くsaoriです。
今回は私がこちらでお話しさせていただくようになって3回目になりました!
妊活、不妊につづき今回は出産についてお話しさせていただこうと思います。
さて、皆さんは少子化と呼ばれるこの時代、年に何人の赤ちゃんがこの世に生まれてくるかご存知でしょうか。
2020年の出生数はコロナの影響を受けて減少傾向をたどり、2021年はさらに減少する見込みです。
第一次ベビーブームと呼ばれた時代の出生数をご存知でしょうか。
第一次ベビーブームの1949年合計特殊出生率は4.32%、出生数は269万6638人でした。ちなみに1950年の日本の高齢者は416万人、4.9%でした。
2019年の合計特殊出生率は1.36。出生数はなんと戦後はじめて90万人を切り86万5234人でした。
一方で、2020年時点での高齢者の人数は、3,612万人。
総人口に対する割合は、28.8%に登ります。
合計特殊出生率は「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」で、次の2つの種類があり、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。
合計特殊出生率について
少子化、高齢化が数字をみていただければ一目瞭然かと思います、そして人口ピラミッドが、ピラミッド→釣鐘型→壺型に変化している、今はまさにその中にいます。
そしてまだ統計が出ていませんが、2020年はコロナの影響を受けてさらに合計特殊出生率、出生数ともに減少すると見込まれています。
コロナの影響とは、具体的に妊娠中のコロナ罹患のリスク、ワクチンのリスク、そして男性がコロナに罹患すると精子に影響がでるといった世間での見解により、妊娠はもとよりセックスレスの夫婦が増加したとも言われていることも含まれます。
あなたの周囲に妊婦さんはいらっしゃいますか?
お子さんを育てていらっしゃる方はいらっしゃいますか?
妊娠している人、出産を間近に控えている人、あるいは子育てを始めたばかりの人が身近にいなくて、妊娠すること・子育てすることが全くイメージがわかない若い女性も多くなりました。
そんなあなたに、今回は出産について少しだけ考えてもらえる時間になればいいなと思います。
Contents
日本は世界トップレベルの安産国
出産に関する22週以降の死産と早期新生児志望を合わせて「周産期死亡」といいます。
また母体側の妊娠、出産に関する死亡を「妊産婦死亡」と呼びます。
今回は、「妊産婦死亡」について世界と比較しながら考えていただければと思います。
そもそも妊娠、出産自体は病気ではなく、生物が自然に行なってきました。
しかし、自然な生理的現象のなか、出産が「異常」に転じて「病気」として治療しなくてはならないということがあります。
もともと生理現象である出産を安全に行えるかは、その国の医療レベルを示すと言われています。
アメリカの周産期死亡は、10万人あたり19人、
お隣韓国の周産期死亡は、10万人あたり11人、
遠いアフリカの中でも都市である南スーダンの周産期死亡は、10万人あたり1,150人です。
そして日本の周産期死亡は、10万人あたり5人。
日本では、2019年には86万5234人の妊婦さんが1年にお産され、分娩関連のトラブルでお亡くなりになられた方は44人です。
世界でトップクラスに安全なお産ができるということを示しているのが、この日本の数字です。
妊娠は命懸け
この数字をあなたはどう捉えるでしょうか。
日本では少子高齢化の煽りを受けて「妊活」「妊婦であること」が、まるでステータスのように扱われている側面があります。いわゆる商業化されているということになります。
しかし、妊娠することは私たち助産師からみたら「命懸け」です。
女性が人生のうちもっとも命の危機となるのは、出生時と分娩時とも言われています。
それくらい分娩にはリスクが伴います。
私たちの多くは妊娠を考えるとき、「死ぬかもしれない」とは考えないですよね。
これは、日本の周産期死亡率の低さよる「分娩神話」があると言われています。
いわゆる妊娠、出産は安全で基本的には命に別状なく経過するであろうと考えている方が大多数です。
そのため日本では、いわゆる高齢妊娠になった35歳以上、今は不妊治療をされているメインの層である40代でも、お金をかければ妊娠できると思って不妊治療を始める方が多いのです。
しかし、あなたの住む地域が韓国なら?アメリカなら?南スーダンなら?
お産をするときに、日本でも44人もの妊婦さんが亡くなっている事実を知ったら…?
高齢妊娠という言葉の意味
現在日本では、35歳以上の妊婦を「高齢妊婦」とよび、より注意して妊娠、分娩管理を行っています。
35歳で妊娠なんて今時珍しくなくなりましたよね。
ですが、日本産科婦人科医会 医療安全部では、20代前半に比べ30代後半では2.8倍、40歳以降では4.4倍も妊産婦死亡リスクが上昇すると提言しています。
※参照:妊産婦死亡報告事業2019|日本産婦人科医会医療安全部
妊娠、出産が命の危機になりうる様々な場面
妊娠、出産時に母体の命に関わる可能性のある合併症としては
- 重症悪阻
- 妊娠高血圧症候群
- 常位胎盤早期剥離
- 羊水塞栓
などがあります。
簡単にそれぞれの症状を説明しますね!
1.重症悪阻
妊娠中は、特につわりの時期にはどのような場面で命を落とす可能性があるのでしょうか。
特につわりの時期にもっとも注意すべきことは、「深部静脈血栓症」ではないでしょうか。
つわりの時期は、食欲不振や嘔気・嘔吐により脱水傾向になっています。
これは皆様もなんとなく想像していただけるかと思います。
ここに拍車を掛けるのが、妊娠が成立した女性のからだは急激に分娩にそなえ、血液を薄くしつつ固まる力を強くしているということです。
脱水が進むと血が濃くなり、血栓ができやすくなります。
そして妊婦さんは血を固まりやすくしているので、この現象が起こりやすいのです。
血栓は血管を通って肺に飛び、肺塞栓を起こすと十分な呼吸ができなくなり死に至ることもあります。
2.妊娠高血圧症候群
以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていた病態で、妊娠前に正常な血圧だった方が、血圧が上昇したり尿に蛋白が出ることで発覚します。
血圧がもともと高い状態で妊娠することを、「高血圧合併妊娠」といいますが、もちろんこちらもハイリスクです。
血圧が上昇すると、血流が悪くなりお母さん自身の腎臓への負荷が増えてタンパク尿が出たり、胎盤への血流が低下して赤ちゃんが育たなかったり、早産の原因になったり。
重症化すると、赤ちゃんがお腹の中で亡くなってしまうこともあります。
お母さん側も、子癇発作と言って、突然の痙攣を起こすことがあります。
妊娠中に子癇発作を起こすと、赤ちゃんへの虚血で赤ちゃんが亡くなることがあります。
また、お母さん自身の血流が不足し、全身の臓器にダメージがいき、脳にダメージを受け死に至ることもあります。
高血圧合併の妊婦さんは、さらにこう言ったリスクが高まりますが、不妊治療に通う女性の高血圧合併の多いこと…。
命を掛けて妊娠していることが、もっと早く知識として伝わっていればと思う日々です。
3.常位胎盤早期剥離
『早剥』と呼ばれることが多いこの状態。
胎盤は、赤ちゃんの酸素供給する大切な臓器。
通常は、赤ちゃんがお腹の外に娩出され、肺で呼吸することができるようになった後、子宮から剥がれ胎盤は役目を終え子宮から外に娩出されます。
しかし、何らかの理由によって胎盤が、赤ちゃんがお腹にいる間に剥がれてしまうことが『早剥』です。
想像できるように、赤ちゃんは突然酸素が途絶えてしまうので、できる限り早く体の外に出して酸素を与えないと亡くなってしまいます。
そして、胎盤と子宮はたくさんの血管でつながっています。
通常は、剥がれた胎盤の跡の止血は、子宮が収縮して止血します。
しかしお産をしていない、赤ちゃんのいる子宮は、その胎盤が剥がれたあとの血管を収縮させて止血することができません。
母体は子宮内で大量に出血しており、母子ともに命の危機となるのです。
4.羊水塞栓症
特に分娩時に、何らかの理由で胎児側の成分である羊水が、お母さん側に入り込んでしまうことがあります。
胎児成分である羊水が血管を詰まらせて、母親の呼吸困難を引き起こします。
羊水塞栓症は、母体死亡の原因で最も多く、防ぐこともできないと言われています。
このように、様々な原因で母体も胎児も命の危機を迎えるのです。
このほかにも、子宮が破裂してしまう子宮破裂、胎盤が剥がれない癒着胎盤、お産後に子宮が十分に収縮せず多量に出血する弛緩出血。さまざまなリスクが潜んでいます。
産婦人科では、自然現象のお産が、こういった異常に移行していないかを監視し、移行した場合には速やかに対処し母子の命を助けております。
先ほども書きましたように合併症は母体が高齢になる程、リスクが上昇することが明らかになっているのです。
知識を持った上でライフプランニングを
命掛けのお産。
助産師としては、できれば若いうちにお産をして欲しいと思っています。
私自身もそうですが、望んでもなかなか望み通りにはいかない、それは重々に承知しています。
晩婚化、晩産化が進む日本社会。
若くして家庭を持ち、お産し、子育てができる環境を整備することこそ、遠回りに見えるけど一番の少子化対策になるのではないかなぁと思っております。
FP女子の皆様は、きっと優秀でバリバリお仕事をしていきたい方もたくさんいらっしゃると思います。
妊娠出産は、仕事が落ち着いてから…
と考えている方もいるかもしれません。
妊娠すること、お産をすることが命掛けであり、年齢を重ねるごとにリスクが上昇することを知った上で、自らのライフプランを考えていただけたら…
そんなふうに思います。
実はこれも、大事な包括的性教育です。
命は一度きり。
知らなくて後悔することなく、ご自身の人生をご自身で設計し、前に進んで欲しい。
これは、助産師だけでなく、みなさまも同じ思いではないでしょうか。
ふと立ち止まり、自分のライフプランを一度見つめていただけたら嬉しいです!!
saori
看護師/助産師/保健師/精神保健福祉士/生殖医療相談士
東京都八王子市出身
大阪大学医学部保健学科卒業後、助産師を取得。
産婦人科病棟、中絶を行うクリニックでの勤務を経て現在は不妊治療分野に従事する。
望まない妊娠や性感染症、40代になってからの妊娠希望など、知識があれば違う結果になったのでは?と考えさせられる患者さまにたくさん出会い、性教育の必要性を痛感。現在は不妊治療分野での勤務を継続しながら、SNSメインで性教育について発信中。