SRHR

こんにちは。看護師、助産師をしているsaoriです。
知らなかった、ということで人生の選択肢を減らさないでほしい、そんな思いで産婦人科にて勤務し様々な患者様との出会いで学ばせていただいたことを、皆様と共有させていただいております。

さて、突然ですが「SRHR」ということばをご存知でしょうか。

皆様がパートナーシップを築くときにとても重要になります。

SRHS」とは「セクシャル リプロダクティブ ヘルス ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights)=性と生殖に関する健康と権利」のことを指します。

…なんのこと?

そんなあなたにこそ読んでほしい本日の内容です。

Contents

パートナーシップには欠かせない「SRHR」

あなたはご自身の、またはあなたの周りの大切な方のパートナーシップについて考えたことはありますか?
私は産婦人科、不妊治療の現場で様々なカップルに出会ってきました。
その中には、対等な素晴らしいパートナーシップを築かれているカップルもたくさんいらっしゃいますが、はたから見てこの関係は支配関係だなと思うカップルも少なくありません。

例えば、何か決断する時に必ず夫に連絡しないと意思決定できない患者様、妊娠を考えていなかったにも関わらず妊娠し、産むことを受容できていない患者様、同じパートナーと何度も妊娠を繰り返し、中絶を繰り返す患者様。

本人の意思というよりも、パートナーとの支配関係によって本人は人生を選択することなく大事なライフイベントを迎えている方がいます。そういった方は往々にして、ご自身の意見を言えない状況になっているのです。

SRHR」は1994年のカイロ宣言で概念が提唱されて、2015〜2030年までに実現するよう目標としているSDGsの中でも各所に提唱されています。

「あなたの体、性に関することは全てあなたがきめていい」

これが「SRHR」の簡単な解釈です。

そんなの当たり前でしょ?そう思ったあなた。本当にそうか考えてみてほしいです。
例えば、あなたは将来、結婚してお母さんに(当然)なる、そんな風に考えていたことはありませんか?
私たちは誰も、同性を好きになっても異性を好きになっても、その人とパートナーシップを結んでも結ばなくても、パートナーと性交渉するかしないか、子供を持つか持たないか全て自分で決められる権利があります。いつか結婚して子供を産んで、家事と育児をする、その刷り込み自体を見直すことから、ご自身の「SRHR」を見つめ直してほしいのです。

A子さんの「SRHR」

A子さんは都内でOLとして働く32歳。そろそろ結婚しないといけない年齢だよな…と思いつつも、結婚することへの魅力、子供を持つことの魅力を感じておらず、本当は独身で好きなことをしたいと考えていました。

そんなA子さん。実は3歳年上で結婚を前提にお付き合いしているパートナーがいます。
A子さんは今の年齢で付き合った方とは結婚しなくては、といった想いはあるものの、自分自身が結婚するということはあまり考えられずにいました。

ある日、デートの帰り道に彼から「うちでゆっくりしよう」と誘われました。
A子さんは翌日仕事がお休みだったので、彼の家でゆっくりお茶でもしてから帰ろうと思い、快諾しました。
しかし、彼は家に着くや否やA子さんにキスをして強引に服を脱がせてこようとします。A子さんは「今日はそういう気分ではない」と断ろうとすると、「うちにくるということはそういうことでしょ」と言われ聞いてもらえません。A子さんも彼とは結婚を前提に付き合っているし、これで関係が悪くなってはとセックスに応じることにしました。

彼はいつもよりもお酒を飲んでいたからか、避妊をするように伝えても「結婚する予定だし、子供ができてもいいでしょ?」といい、避妊をしてくれません。避妊をしてもらえなかったA子さんですが、これまでも避妊をしてもらえないこともあったけど妊娠していないし、大丈夫だろうと思っていました。

そこからA子さんは仕事が忙しく充実した日々を過ごしていました。昇進も決まり、新しいプロジェクトも立ち上がり今まで以上に仕事にやりがいを感じていました。

「…あれ?そういえば生理きていない…」

仕事が忙しく月経周期など考えてもいませんでしたが、もう生理が2週間遅れていることに気がついたのです。

心配になり産婦人科を受診。

すると、「おめでとうございます、妊娠6週ですよ。」

と。「…え?…仕事がやっと軌道にのってきてこれからというときに。。」

正直、結婚を前提として付き合っていたけど、まだ具体的な話は進めていないし、本当のところ彼がどう思っているかなんてわからないし…今妊娠するとは全く考えてもない事態でした。

彼に相談すると「よかったじゃん。結婚の話をすすめよう」といわれました。産むか産まないか、自分としては悩んでいるA子さん。そんなこと彼には伝えられずにいました。

人生の選択の中に「SRHR」は行使されるべき

さて、みなさんはA子さんの話を聞いてみて、どう思いましたか。
A子さんは自らの「性と生殖に関する健康と権利」をきちんと行使していたでしょうか。

結婚するか、子供をもつか。すべてA子さんが決めていいことです。まわりから結婚するように言われても結婚する必要を感じていなかったら結婚を選択する必要はありません。

また、彼の家に行った際にセックスを断りきれませんでしたね。また、避妊もしてもらえなかった。そして結果妊娠し、キャリアがこれからというときに産むか産まないか誰にも相談できず悩んでいました。

セックスに応じるかも避妊をするかも妊娠した場合にその子を産むかも、A子さんが最終的には決めていいはずです。

家に行ったことはセックスに合意したことにはなりませんし、結婚を約束していることは避妊をせず妊娠して言い訳でもありません。

ちなみに彼が例えば「ここまでついてきたお前が悪い」とかなにか少しでも脅しをかければ、相手が彼氏であってもそれは性被害とみなされ、強制性行等罪の適応になり、懲役5年以上の実刑となります。夫婦、カップル間でも性被害となるのです。

そして今回の場合は妊娠しています。もちろん、妊娠し子供をもつことを望んでいる夫婦、カップルにとってはとても嬉しい出来事です。ですが、まだ子供を考えていないタイミングでの妊娠は女性のライフプランを大きく変えてしまいます。性と生殖はライフプランに大きく影響してくるのです。今回の場合は結婚を予定しているので、もちろん産むかどうか彼に相談して欲しいところではありますが、最終的に産むかはA子さんが決めればいいのです。

そして、A子さんが決めたことに誰も何の批判もする権利もないのです。

恋愛にだって「SRHR」はきちんと守られるべき

A子さんの事例は結婚を考えているパートナーとの関係での事例でしたね。
今はそういったパートナーがいない方もいらっしゃいますよね。ですが、「SRHR」はなにも性交渉をおこなうパートナーが相手で発生する権利ではありません。

例えば

  1. おごるのが当たり前、高価なプレゼントをもらう。
  2. 無視する。
  3. 怒鳴ってくる。
  4. 殴るふりをする。
  5. 「いや」と伝えると逆キレする。
  6. 相手の気持ちを考えずに性交渉を求める。
  7. ほかの異性の話をすると不機嫌になる。
  8. 勝手にSNSをチェックされる。

こんなこと、付き合う前、付き合ってすぐありませんか?(種部恭子:SRHセミナー資料より)

1は取引になります。2~6は立派な暴力ですし、7、8は束縛になります。
SRHR」は守られるべき権利です。その権利を行使できない関係は暴力、支配の関係に値します。
恋愛での1~8は「デートDV」と言われています。もちろん、実際に手を挙げられることは暴力ですが、支配したり束縛したり、取引をすることで権利を行使できない関係自体がDVに値するのです。

パートナーと対等な関係を築けていますか?

パートナーとの関係は対等であることが必要です。
彼の顔色をうかがったり、彼と一緒にいない時間の行動を監視されたり、あなたが誰と会うか、どこに住むか、何を着るか、食べるか決めるのはあなたです。

もちろんあなたが女性でも男性でもパートナーのことを監視し、取引することは相手が「SRHR」を行使することを阻害し、いわゆるデートDVをしていることとなります。そして一度支配関係が構築されると支配されている側はそれが支配関係にあることを気づくことすらできない人も多くいます。

パートナーシップは私たちの人生を豊かにするパートナーとの関係を指します。しかし、正しいパートナーシップ、支配関係や取引という関係があることを知らないと、自分の大切な人との関係を見つめなおすことすらできなくなってしまいます。

私たちのパートナーシップの関係は、両親から学んでいる人も多いのではないでしょうか。両親の関係性で学んでいる人が多くいます。そのパートナーシップが歪んでいることを気づくことは難しいのかもしれません。

だからこそ、誰にでも「セクシャル リプロダクティブ ヘルス ライツ=SRHR」を持つことを知り、行使できるような教育が求められています。

これも大切な性教育。

あなたも自らのパートナーシップの在り方を考えていただけたら嬉しいです。

saori 
看護師/助産師/保健師/精神保健福祉士/生殖医療相談士 
東京都八王子市出身
大阪大学医学部保健学科卒業後、助産師を取得。
産婦人科病棟、中絶を行うクリニックでの勤務を経て現在は不妊治療分野に従事する。
望まない妊娠や性感染症、40代になってからの妊娠希望など、知識があれば違う結果になったのでは?と考えさせられる患者さまにたくさん出会い、性教育の必要性を痛感。現在は不妊治療分野での勤務を継続しながら、SNSメインで性教育について発信中。