突然ですが、令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布された育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部法律が改正となるのはご存知でしょうか?
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育児・介護休業法の改正
なんとも難しそうな言葉が並んでいますが、この法律を平たく言うと、育休・産休・介護の休業取得がしづらい背景と改善のための法改正になります。
育児・介護休業法は、子育て・介護などと仕事を無理なく両立できる環境を作るために欠かせない法律です。特に日本では少子高齢化が進む中、育児・介護休業法を理解しておくことは非常に大切です。
出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。
令和3年改正法の概要
育児・介護休業法改正の背景
女性の継続就業率
では最初に、改正となった背景ですが、政府目標である第1子出産前後の女性の継続就業率55%(令和2年)にすることでありますが、直近の統計データ(2010年~2014年:5年間ごと)を拝見すると、53.1%となっています。
妊娠・出産を機に退職をした理由
その中で、女性正社員が妊娠・出産を機に退職をした理由をみますと、仕事と育児の両立の難しさで辞めた方が約4割、次いで家事・育児により時間を割くために辞めた方が約29%でした。
両立が難しかった具体的な理由としては、自分の気力・体力がもたなそうだった(もたなかった)が約59%、勤務先に育児との両立を支援する雰囲気がなかったが約33%となっています。
女性の継続就業・出産と男性の家事・育児時間
女性の継続就業と出産と、男性の家事・育児時間の関係を拝見すると、日本の夫(6歳未満の子どもを持つ場合)の家事・育児関連時間は、1時間程度と国際的にみて低水準で、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にある事がわかります。
それらを踏まえ、今回の改正の全体像として、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずることが目的となっています。
育児・介護休業法改正の概要
次に改正の概要を見ていきます。
1,男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み『産後パパ育休』の創設【育児・介護休業法】
子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みを創設する。
- 休業の申出期限については、原則休業の2週間前までとする。※現行の育児休業(1か月前)よりも短縮
- 分割して取得できる回数は、2回とする。
- 労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することを可能とする。
2,育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
- 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
- 妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずることを事業主に義務付ける。
3,育児休業の分割取得
育児休業(1の休業を除く。)について、分割して2回まで取得することを可能とする。
4,育児休業の取得の状況の公表の義務付け
常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得の状況について公表を義務付ける。
5,有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件を廃止する。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することを可能とする。
6,育児休業給付に関する所要の規定の整備【雇用保険法】
- 1及び3の改正を踏まえ、育児休業給付についても所要の規定を整備する。
- 出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例を設ける。
施行期日
・2及び5:令和4年4月1日
・1、3及び6:令和4年10月1日(ただし、6②については令和3年9月1日)
・4:令和5年4月1日
引用:育児・介護休業法の改正について ~男性の育児休業取得促進等~
こうした雇用環境整備を行うこと、そして、個別の周知も高めることで、より働きやすい環境が構築でき、安心して育児・介護休暇が取得できる一手になることを期待しており、そもそもの日本の人口増加にもつながっていくことも期待できるのではないでしょうか。
改めて少子高齢化について
そこで、改めて日本の少子高齢化について見ていきたい。
まず、高齢化が問題ではなく、少子化に問題あることは共通の理解であると思います。
15歳から49歳までの女子の年齢別出生率を合計したものを「合計特殊出生率」と言います。
この合計特殊出生率が、2021年は1.30と発表されました。因みに、人口における男女の性比はおおよそ1:1のため、合計特殊出生率が2以上なら人口は増加傾向に、2未満なら減少傾向に転じると言われています。
この特殊出生率の数字は、何を意味するのでしょうか?
少子化の影響
少子化の影響としては、経済的と社会的の2つに分けられます。
経済的影響
経済的影響としては、15~64歳の労働年齢人口の減少とともに、高齢化にともない、短時間勤務を希望する高齢者の割合が増加し、労働力供給の減少をもたらす恐れがあるのではないでしょうか。
また少子高齢化が進むことで、年金などの社会保障への現役世代の負担が増大することも大きな問題となってくるのではないでしょうか。
もし現状のままで少子化が推移すると、労働者の手取り所得は減少に転じるという厳しい予測もあり、少子化を解消しなければ日本経済全体に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
社会的影響
次に社会的影響としては、独身の人や子どものいない世帯が増加し、社会の基礎的単位である家族の形態も大きく変化し、多様化していきます。特に独身の高齢者の増加は、介護やその他の社会的扶養の必要性、つまり社会保障費の増大にも繋がるのではないでしょうか。
そして、地方の地域によっては過疎化がさらに進行し、現在の地方行政のままでは、市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になることも懸念されます。
参考までに、「人口ボーナス(期)」という言葉があります。
これはある社会が「多産多死」の社会から「少産少子」の社会に切り替わる際に生じる、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)がその他の人口の2倍以上ある期間のことを指します。
また生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すことや人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすいとされています。
逆に、少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が上昇することで社会保障費などがかさみ、経済成長を阻害することを「人口オーナス」と言います。
まとめ
では、最後になりますが、今回、育児・介護休業の改正についてと、少子高齢化の一部についてお届けしてきました。
人口における経済的な影響、社会的な影響については、我々全ての人に影響を与える事となることがお分かりいただけたと思います。
日本では今後、人口減少が顕著に現れると予測されますが、世界はどうなのか?
日本の将来にも目を向けつつ、皆さんの将来の夢を叶える自助努力の情報の一つになれば幸いです。
今を変えれば過去も未来も変えられる!!!