毎年頑張っているのに目標が達成できない!①

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毎年目標を達成できない人の心理メカニズム

こんにちは!HOSメソッドコーチ、合同会社HOS代表の石川 聡です。

約20年間、外資系生保にてセールスとマネージャーを経験した後に独立しました。
現在は2棟の福祉施設経営の他、今年度より営業の方(主に生命保険セールス)向けのコーチングを行っています。
このブログでは定期的に営業に必要な考え方、ノウハウ、あるいはマネージャー向けの部下の育成方法のエッセンスなどについて発信をしていきたいと思います。
時にはオンとオフの上手な切替え方や、家族や友人との円滑なコミュニケーションを取るための具体的なスキルなどにも触れながら進めていきたいと思います。宜しくお付き合いください!

さて、本日のテーマは【毎年目標を達成できない人の心理メカニズム】です。

嫌なテーマですよね(笑)。
しかし、これに関しては、実はほとんどの人がその原因についての誤解をしていると思いますので、あえてテーマに取り上げました。今日は特に、セールスを指導するマネージャーの立場の方にお読みいただきたいテーマです。
そしてセールスパーソン自身に方にとっても、このメカニズムを知っていただく事で変な罪悪感から解放されることを願っています。

「やらされ目標」と「達成したい目標」

さて、生命保険のセールスは多くの場合、たくさんの契約を頂けばその分、自分の収入に反映されますよね。
ですから生命保険セールスの目標は、会社から降りてきたいわゆる「ノルマ」ではなく、自分自身が得たい収入の目標になっているはずです(会社などによっては例外はあるかも知れません。その際はご容赦くださいね)。

つまり生保セールスの目標は、他の業界のようないわゆる「やらされ目標」ではなく、「自分が達成したい目標」です。これだけでもモチベーション上とても恵まれた業界であると言えます。
何しろ一般的な業界でのセールスは、会社や支社や上司から数字を割りてられ、絶対売ってこい!とノルマを課せられます。達成したら今度は、未達成者の分の数字も上乗せされ、「何とか締め日までこれだけ追加してくれ!」と上司に泣きつかれ年度末まで走り回り、何とか達成してみれば、なんと翌年の目標は更にそこに上乗せされた数字のノルマが降ってくるのです。しかも年々ノルマを積み上げられる自分と、毎年目標未達成の人たちとの給料差はほとんどありません。ひどい話ですよね(笑)。冗談抜きでこんなことを5年も10年も繰り返していたら、自分自身がおかしくなってしまうような気がします。

それから比べれば、自分が得たい収入を実現するための、まさに「自分自身の達成したい目標」を掲げて、一年戦っていけるのですから、とても健全な仕組みであると言えます。

にもかかわらずです。
毎年毎年、自己目標を達成できない人が一定数います。
いや、達成できない人の割合の方が多いかもしれませんね。ひょっとしたらこれを読んでらっしゃるあなたも、達成できずに悔しい思いをしてらっしゃるかもしれません。
私自身も売れなかった時期には、何年も連続して目標を達成できない時期がありました。

さて、このように目標を達成できないセールスパーソンについて、指導する立場のマネージャーはどう思っているのでしょうか?

意識のギャップ

特に過去高成績のセールスであったマネージャーの場合などは、そのメンバーが「なぜ達成しようとしないのかわからない」という風に思ってしまうようです。つまり、「目標は達成するのが当たり前」と思っている人からすると【未達成】ということは達成「できなかった」のではなく、「しなかった」のだと思ってしまいがちなのです。
しかもその目標は【自分のための目標】なのになぜやらないのか、「やらない意味が分からない」と思ってしまうのです。

マネージャーの意識

目標は「当然達成するべきもの」と考えているマネージャーと、「達成したいが難しい」と考えるセールスパーソンとの両者の意識のギャップは、実はこの時点で絶望的に開いてしまっています。
ここを自覚し「意識の共通言語」を見つけ、それによる話し合いが出来ればよいのですが、ほとんどの場合この距離感や意識のギャップに気が付かないまま指導に入るのでうまくいきません。
多くの指導のパターンは次の流れになります。

セールスパーソンとの面談の中で、マネージャーはまず目標の確認から始めます。
つまりは「その目標は本当に達成したいと思っている目標なのか?」という事。
やりたい目標だったらできるはず。それが出来ないということは、「本当は目標が違うのではないか?」という仮説なのです。
しかし、セールスパーソンの答えは「Yes」です。
セールスパーソン自身もその目標は、「やりたい」と思っている場合がほとんどです。
ですから、「ウソの目標」を立てている訳ではないという事なのです。

目標の確認ができ、これはセールス自身が本当にやりたい目標なのだとわかったマネージャーは、次にこのように考えを変えていきます。
本当の目標だったとしたら、やるべきことも決まっているのだから、これは本人の「努力が足りないはずだ」と。
ではなぜ努力できないのか?それはこの仕事に対する「本気度が足りない」から。
というふうに進んでいき、最後は「覚悟が足りない」という風になり、この様な言葉をセールスパーソンに投げ掛け、行動を促すようになるのです。

セールスパーソンの意識

さて、このような指導を受けているセールスパーソン側の心情はどうでしょうか?

確かにこの目標はやりたい目標です。
ウソはありません。
しかし毎日の現実は、そう簡単に変わっていきません。
マネージャーとの面談を終え、「よーし、やるぞ!」と意気込んでも、一晩寝て次の日になるといつもの自分に戻ります(笑)。

それでも面談後の1~2週間位は、自分を奮い立たせて、何とか訪問件数やアポイント件数なども多い数で頑張れるのですが、その内段々と疲れてきたり、仕事の調子が悪くなってきたりで、いつものアベレージに戻っていきます。そして1カ月もすれば、いつもの活動量といつもの成績に落ち着いているはずです(泣)。

そうすると次の機会からは、マネージャーから「努力」だ、「本気度」だといったワードが襲い掛かり、最後は「覚悟が足りない!」とか、「セールスとしてのありかたがおかしい!」などと言った叱責になっていきます。
挙句の果てには、「なぜこの仕事を選んだのか胸に手を当てて考えろ!」とか言われる始末。
「今さらそんな事を言われても…」って思っちゃいますよね(泣)。

防衛本能、発動

このような面談を重ねると、もはやセールスパーソンは、「自分のやりたい目標を達成するにはどうしたらよいか?」という事よりも、「努力しているように・本気度が高いように・覚悟がある様に見えるにはどうしたらよいか?」ということの方を心の奥底で常に気にしながら仕事をするようになってしまうのです。
ストレートな言葉で表現すれば、「頑張っているフリ・頑張っているアピール」ってヤツです。

しかし、これはセールスパーソンの無意識の防衛本能です。
もしこれをお読みのあなたが、上記のセールスパーソンの例に「ちょっと自分も思い当たるな」と思ったとしても、その思考や行動を恥じる必要はありません。
防衛本能なのだと理解すれば充分です。
「数字は達成しなかったが頑張っている」という風に思われたい。という承認欲求でもあるのです。

さて、このような状況になると、マネージャーが声がけして何度面談を重ねても、もはや解決には向いません。
なぜでしょう?
それは「目標達成のために」という表面上のテーマや、話し合っている内容は共通しているものの、実は心の奥底にほぼ無意識に感じているそれぞれの思いは、両者全く違うからなのです。

食いちがう”本音”

それぞれ感じている思いとは何でしょう?

マネージャーは、目の前の「セールスパーソンの考えや行動を何とかして変えたい」という思いです。
一方、セールスパーソンは、「何とか叱責されないようにこの時間をやり過ごしたい」という思いです。
そしてこの面談のお互いの本音のゴールがここなのです。

ですから全くかみ合っていないこの状況の中、面談によって解決することはないのです。

では、どのようにしていけば解決に向かうのでしょうか?

「なぜ目標を達成したいのにできないのか?」というメカニズム

それはセールスパーソン自身もそうですが、マネージャーが「なぜ目標を達成したいのにできないのか?」というメカニズムを知ることです。

それこそ人によって細かい原因は様々でしょう。しかしほとんどの方の場合以下の2つが原因になっています。

1:目標未達成の本当の原因の分析と対策が出来ていない。

これに関してはぜひ、前回【事象を細かく分解してみる】と前々回【大雑把にとらえると失敗する】のブログをご覧下さい。

目標を達成したくないセールスパーソンはいません。
達成したくとも達成の仕方が分からないのです。
なぜでしょう?
それは大雑把にしか捉えていないために、「自分の本当のウィークポイント」を理解できていないからなのです。
ですから目標の達成の為に頑張ると言っても、実は「何を頑張れば達成するのか」が分かっていないのです。

2:上のステージへ進む事を邪魔する「もう一人の自分」の存在に気が付いていない。

何とも意味深というかキャッチ―な表題ですが(笑)、あなたはこの表題の存在を知っていましたか?
知っている方は「あ~あれか」とすぐにお気づきかと思いますが、ステージアップ・レベルアップしたい場合の最大の敵が自身の「コンフォートゾーン」という存在です。
コンフォートゾーンに関しては「知ってるよ」という方も多いと思いますが、皆さんの想像以上に厄介な存在です。この存在を無視して頑張ってレベルアップを試みても多くの場合返り討ちに遭います。
しかしこのコンフォートゾーンも、大事な自分であり生きていくために必須な存在なのです。
そしてこのコンフォートゾーンをうまく操っていくことが出来れば、「スッ」と今のレベルから卒業し、上のステージに移動していけます。そして今度はそのレベルで安定した成績をあげる事ができるのです!

このコンフォートゾーンについて次回以降触れていきたいと思います。お楽しみに!

<プロフィール>
  石川 聡 (いしかわ さとし) 合同会社HOS代表
  1968年千葉県千葉市生まれ
  千葉県立長生高校卒業
  信州大学経済学部卒業

就活は「ビールが大好きだから」というとてつもなく間抜けな動機で「麒麟麦酒株式会社」を選定。奇跡的に内定を受け無事入社。その後3場所にて10年間勤務の後、プルデンシャル生命保険より転職の誘いを受け32歳の時に転職。初年度こそ順調に推移したが2年目以降成績は下降曲線。4年目にはどん底の状態になり、半ばうつ状態。お酒の力が無いと怖くて寝られない日々が続いた。小さなことから積み上げようと奮起し毎週1件以上の契約を続けることにこだわる。幸い135週連続で達成し成績はV字回復する。その後営業所長に昇格。自身の売れなく辛かった経験をもとに、脱落者を出さない営業所経営を目指し最終的にメンバー13人、平均年収2000万超の営業所にまで成長させる。
その後自身の使命は「教育」であると確信し、50歳になるタイミングでプルデンシャル生命を卒業・独立し現在に至る。座右の銘は「人生60歳からが本番!」
現在2棟の福祉施設の経営の他、使命である教育事業を2021年よりスタートさせる。
HPにて生保営業・マネージャー向けのメール講座を開設中。
有料メルマガの他無料で読めるブログも執筆中。https://salesperson.jp
著書「トップ営業の手法に学ぶ新時代の吹奏楽指導法」(ヤマハ出版)

~ HOSメソッドとは? ~
 設立した社名にもなっているHOS(Harmony Of Smile)から名付けたメソッド名です。
 和訳すると「微笑みの調和(ハーモニー)」ということです。
 従来のセールスというと顧客を説得して買っていただく。もし反対がきたら反対を処理して…といった、いわばセールスが顧客と勝負するといったような型が一般的でした。
 しかしこれからの時代はこういったスタイルではモノは売れません。顧客に寄添い、顧客が「是非これ欲しいです」といったものに対して、サポートして購入のお手伝いをする。というスタンスに変化していくのです。
 そして購入後も寄り添い続ける事により、顧客の口コミで新しい人との微笑みのハーモニーがまた生まれる。このようなスタイルを生命保険のセールスで実現する新時代のメソッドなのです。現状の勝負スタイルに疑問を持っている方は一度学んでみると良いでしょう!新たな発見があるはずです。